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最高裁判所第三小法廷 平成2年(行ツ)211号 判決 1991年3月19日

上告人

沖野敏男

被上告人

神戸港労働公共職業安定所長畠中多賀治

右指定代理人

篠原睦

右当事者間の大阪高等裁判所平成元年(行コ)第二九号日雇港湾労働者登録取消処分取消請求事件について、同裁判所が平成二年九月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄)

上告人の上告理由

大阪高等裁判所は次に示す法令・憲法に違背した判決をしている。以下列挙する。理由を述べる。

第一点 大阪高等裁判所は行政事件訴訟法第七条「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。」に違反し、次にあげる民事訴訟法等の各条項号に違反した判決をしている。

かつ、民事訴訟法第三九五条第一項「左の場合に於ては常に上告の理由あるものとす」第六号「判決に理由を附せず又は理由に齟齬あるとき」の「理由に齟齬あるとき」に該当する判決をしている。

一1(1) (事実)『控訴裁判所・判決文・事実欄・第二当事者の主張』として『当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実欄に摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

(当審における控訴人の主張)

別紙記載のとおりである。』と記載されている。

(2) そこで、「第一審判決文(控訴審判決文)・事実・第二当事者の主張」記載事項について事実があったか、なかったかを点検する。

◎(事実)

『判決文・一請求原因

1 原告は昭和五六年六月一日、神戸港労働公共職業安定所(以下「当安定所」という。)の登録日雇港湾労働者となったものである。』と上告人が述べた事実はない。被上告人が訴状に対する答弁書、被告の主張で述べている事項である。

『判決文・一請求原因

2 被告は原告に対し、昭和六一年一〇月一七日、次の理由で右登録の取消処分(以下「本件処分」という。)をし、同日その通知書を原告に送達した。

(一) 原告は同年六月一日から同年九月二九日までの間、無届による不出頭を行い、かつ、その不出頭理由が正当なものとは認められない。

(二) 同年五七年一〇月四日及び同六〇年一一月五日に発生した公傷について、意図的に公傷期間の引延ばしを行った。』と上告人が述べた事実はない。

この上告人が述べた事実はない事実は、控訴判決に多大に影響を及ぼす重大な事実である。

<1> (事実)

控訴人(上告人)は、訴状・請求の理由一として

『事実――被告は原告に対して昭和六十一年十月十七日に、日雇港湾労働者登録取消通知書を送付した。

その内容は、

〔昭和五十六年六月一日登録、登録番号二十一号の貴殿に関する日雇港湾労働の登録については、下記の理由により、これを取消すので通知します。

日雇港湾労働者登録票は直ちに返納して下さい。なお、この処分に不服のあるときは、この処分のあったことを知った日の翌日から起算して六十日以内に知事に対して審査請求をすることができます。

一 取消年月日 昭和六十一年十月十七日

二 根拠

(一) 港湾労働法第十条第一項第一号

(二) 神戸港登録日雇港湾労働者登録取消運用基準一の(四)

三 理由

昭和六十一年六月一日から昭和六十一年九月二十九日までの間、無届による不出頭を行い、かつその不出頭理由が正当なものとは認められないこと。

また、昭和五十七年十月四日及び昭和六十年十一月五日発生の公傷において意図的に公傷期間の引き延ばしを行ったものと認められること。〕である。』と述べた。

<2> (事実)

被控訴人(被告被上告人)は、上告人の訴状に対する答弁書において、

『被告の主張

本件処分に至る経緯

六 被告は、昭和六十一年一〇月一七日本件処分をし、本件処分の通知書に処分の理由を

「根拠(1)港湾労働法第一〇条第一項第一号

(2)神戸港登録日雇港湾労働者登録取消運用基準1の(4)

理由 昭和六一年六月一日から昭和六一年九月二九日までの間、無届による不出頭を行い、かつその不出頭理由が正当なものとは認められないこと。

また、昭和五七年一〇月四日及び昭和六〇年一一月五日発生の公傷において意図的に公傷期間の引き延ばしを行ったものと認められること。」と記載したうえで、昭和六一年一〇月一七日原告に右通知書を送達した。』と述べた。

<3> (事実)

『控訴判決文・事実欄・第一・当事者間の申立の一つとして

一 控訴人 1 原判決を取り消す。

2 被控訴人が控訴人に対して昭和六一年一〇月十七日付でした日雇港湾労働者登録取消処分を取消す。

二 被控訴人 本件控訴を棄却する。』

と記載されている。また、間違いのない事実である。

<4> 以上<1>、<2>の事実より

『控訴審判決文(第一審判決文)、一請求原因2神戸港労働公共職業安定所長は沖野敏男に対し、昭和六一年一〇月十七日、次の理由で神戸港登録日雇港湾労働者の登録の取消処分(以下「本件処分」という。)をし、同日その通知書を沖野敏男に送達した。

(一) 沖野敏男は同年六月一日から同年九月二九日までの間、無届による不出頭を行い、かつ、その不出頭理由が正当なものとは認められない。

(二) 同五七年一〇月四日及び同六〇年一一月五日に発生した公傷について、意図的に公傷期間の引延ばしを行った。』の事実のないことは明らかである。

また、控訴裁判所の主張する「次の理由で神戸港登録日雇港湾労働者登録取消処分(以下「本件処分」という。)をし、」で述べている「本件処分」と称するものは、<1>・<2>の事実より上告人・被上告人が述べている「本件処分」ではないのは明らかである。「本件処分」と称するものは偽物である。

「偽物本件処分」は「本物本件処分」と似かよっている。また、似てなければ偽物の値うちがない。「偽物本件処分」はあくまでも偽物であって、本物本件処分ではない。

『判決文・一請求原因

3 原告は本件処分を不服として、同六一年一一月二九日兵庫県知事に対し審査請求をしたが、右請求は同六二年四月一一日棄却され、原告は同月一三日右裁決書を受領した。』と上告人が述べた事実はない。

控訴裁判所が判決文・事実・第二当事者の主張・当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実欄に摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。として引用した第一審判決文・事実・第二当事者の主張・一請求原因2「被告は原告に対し、」より「(二)同五七年一〇月四日及び同六〇年一一月五日に発生した公傷について、意図的に公傷期間の引延ばしを行った。」に記載した「本件処分」は「偽物の本件処分」であるので、前記<1>、<2>の事実より以下その引用した判決文・事実・第二当事者の主張・一請求原因欄に記載されている「本件処分」の文言が加入されている事項はすべて上告人、被上告人が述べた事実がない事実は明らかである。

『判決文・一請求原因

4 しかしながら、本件処分は次に述べるとおり違法なものである。

(一) 「原告は昭和六一年六月一日から」より「それはやむを得ない理由によるものである。」まで

(1) 「すなわち、」より「これに対して不服申立をした。」まで

(2) 「当事」より「就労できる状態ではなかった。」まで

(3) 「さらに、」より「不出頭理由を明らかにした。」まで

(二) 「公傷期間の引き延ばしについては事実無根である。」より「休業補償給付が支給されていたものである。」まで

(三) 「本件処分は他事考慮によって」より「原告の言い分は聞き入れられなかった。」まで』

と上告人が述べた事実はない。

『判決文・一請求原因

5 よって、本件処分は違法であるからその取消を求める。』と上告人が述べた事実はない。

『判決文・二請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし3項の事実は認める。

2 同4項の本件処分が違法である旨の原告の主張は争う。

(一) 「同4項(一)のうち、」より「報告を述べた事実は認め、その余は争う。』

(二) 同4項(二)のうち、原告がその主張の日まで休業補償給付を支給されていた事実は認め、その余は争う。

(三) 同4項(三)の主張は争う。』と被上告人が述べた事実はない。

『判決文・三被告の主張

次に述べるとおり本件処分は適法である。

1 本件処分に至る経緯は次のとおりである。

(一) 「原告は昭和五七年一〇月四日、」より「同年二月には就労可能の診断をしていた。」まで

(二) 「原告は、同二〇年九月五日、」より「休業治療を受けた。」まで

(三) 「原告は同年一一月五日、」より「同年二月末就労可能の診断をしていた。」まで

(四) 「右(三)の傷害について」より「原告は当安定所に出頭しなかった。」まで

2 「ところで、同六〇年一一月五日発生の公傷について」より「原告がホコを持参したことなどからやむを得ず前記の診断書を作成した。」まで

3 「ところで、港湾労働法における登録の取消は公共職業安定所長が、」より「昭和五七年九月二五日付運用基準によって行なわれる。」まで

(一) 「そして、登録日雇港湾労働者は、」より「原告の不出頭はこれに該当する。

(二) 「また、登録日雇港湾労働者が港湾労働に従事するために」より「運用基準一(4)に該当する。」まで

4 以上のとおりであるから、被告が原告に対してした本件処分は適法である。』

と被上告人が述べた事実はない。

『被告の主張に対する認否

1(一) 「被告の主張1項(一)のうち、」より「受けたものである。」まで。

(二) 同項(二)の事実は認める。

(三) 同項(三)のうち、原告が被告主張のころ就労可能であったことは争い、その余の事実は認める。

(四) 同項(四)の事実は認める。

2 「同2項のうち、」より「当安定所も熟知しているはずである。」まで

3(一) 「同3項(一)のうち、」より「出頭しなかったことは争う。」

(二) 「同項(二)のうち、」より「該当することは争う。」まで

4 同4項は争う。

と、当然、上告人が述べた事実はない。

(3) 以上(2)で控訴判決文・事実・第二当事者の主張(「当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実に摘示とおりであるから、ここにこれを引用する。」として第一審判決文・事実欄より引用した(「第二当事者の主張」)記載事項について事実があったか、なかったかを点検した結果、その事実はない。

拠って、控訴裁判所は本物本件処分をいじくり偽物本件処分を捏造して控訴人の本物本件処分取消請求、被控訴人の本物本件処分取消請求棄却請求にもかかわらず、当事者双方の主張である

1 本物本件処分取消請求本物理由

2 本物本件処分取消請求本物理由に対する本物認否

3 本物本件処分取消請求棄却請求本物理由

4 本物本件処分取消請求棄却請求本物理由に対する本物認否

を判決文・事実欄に記載しているのは明らかである。つまり、控訴人の第一審における訴状・第一準備書面より第十二準備書面、被控訴人の第一審における答弁書、第一準備書面・第二準備書面主張事実を排斥しかつ要領を摘示しているのは明らかである。これらは、民事訴訟法第一九一条「判決には左の事項を記載し判決を為したる裁判官之に署名捺印することを要す」の第二号事実及争点記載不備、及び第二項「事実及争点1記載は口頭弁論に於ける当事者の陳述に基き要領を摘示して之を為す」に違反した判決である。

(付記)民事訴訟法第一九一条を民事訴訟法第一九一条第一項と訂正する。

また、同法第三九七条「第一審に為したる訴訟行為は控訴審に於ても其の効力を有す」に違反した判決をしている。

(4) 以上(1)、(2)の事実記載事項について控訴審において、第一審判決の違法事項として上告人は、控訴人第二準備書面(甲三号証)、第四準備書面で陳述している。拠って、民事訴訟法第三八七条「第一審の判決の手段が法律に違背したるときは控訴裁判所は判決を取消すことを要す。」に違反した判決をしている。証拠は第一審記録中の上告人の訴状・第一準備書面より第十二準備書面までの全てを引用する。

2(1)<1> (事実)

『控訴裁判所はその平成二年九月二十七日付判決文で

事実

第一 当事者の申立

一 控訴人

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人が控訴人に対して昭和六一年一〇月十七日付でした日雇港湾労働者登録取消処分を取消す。

3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二 被控訴人

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

第二 当事者の主張

当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。(ただし、原判決八枚目の六行目の「運用基準一(4)」を「運用基準―(4)と訂正する。)(当審における控訴人の主張)別紙記載のとおりである。』

と記載されている。

『判決文・掲載別紙によると、控訴人・第四準備書面・第七準備書面・第八準備書面のみしか、提示掲載されていない。』

<2> (事実)

『控訴人は、控訴状で

控訴の趣旨

原判決を取消す。

被控訴人の日雇港湾労働者登録取消処分を取消す。訴訟費用は第一・二審共被控訴人の負担とする。

との判決を求める。

控訴の理由

第一審裁判所は、行政事件訴訟法第七条・第三十条等に違背した判決をしてる。

詳細は追って明らかにする。』

と述べた。

<3> (事実)

『被控訴人は控訴状に対する答弁書で

控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する

控訴費用は控訴人の負担とする

との判決を求める。

被控訴人の主張

原判決の判断はすべて正当であって、本件控訴は理由がないから、速やかに棄却されるべきである。

なお被控訴人の主張及び立証は、原判決事実摘示のとおりであるからこれを援用するほか、当審における控訴人の訴えた主張・立証を待って随時提出する。』

と陳述した。

<4> (事実)

『控訴人の控訴審において

1 控訴人第一準備書面

2 〃二〃

3 〃三〃

4 〃四〃

5 〃五〃

6 〃六〃

7 〃七〃

8 〃八〃

9 〃九〃』

を陳述した。

証拠を附属書類甲一号証として提出する。

『平成二年七月三日、第五回口頭弁論期日に、控訴人は第九回準備書面(平成二年七月三日付)を陳述した。

その第九準備書面三で

控訴人既に提出済み、第一準備書面、第二準備書面、第三準備書面、第五準備書面の全てを陳述する。と記載した。』

<5> (事実)

以上<2>・<3>・<4>の事実より

<1>の判決文・事実欄・第一当事者の求めた裁判記載事項は適法に記載されている。

ところが、「判決文・事実欄・第二当事者の主張」には<3>の事実のうち、

『被控訴人の主張

原判決の判断はすべて正当であって、本件控訴は理由がないから、速やかに棄却されるべきである。』という被控訴人の主張事実が排斥されている。

『被控訴人の主張及び立証は、原判決事実摘示のとおりである。』が排斥されている。

<6> (事実)

『控訴人は、控訴人第五準備書面一で被控訴人の主張に対する認否をした。』

『判決文・事実欄・第二当事者の主張。

(当審における控訴人の主張)

別紙には、控訴人が陳述した、第一、二、三、五、六、九準備書面が排斥されてしまっている。』

<7> (事実)

控訴審において、控訴人は第一審判決が行政事件訴訟法第七条・民事訴訟法第一九一条第一項第二号・第二項に違反している、旨の主張を何度もいってきた。

<8> 控訴審において被控訴人が主張する

「第一判決の判断はすべて正当であって、本件控訴は理由がない。被控訴人の主張及び立証は、原判決事実摘示のとおりである。」

に対する。

控訴人第五準備書面、第六準備書面陳述による、被控訴人の主張に対して「否認」しているので、これが控訴審における一大争点である、これも欠落している。

(2) 以上(1)より控訴裁判所は民事訴訟法第一九一条「判決には左の事項を記載し判決を為したる裁判官之に署名捺印することを要す。」第二、事実及争点及び第二項「事実及争点の記載は口頭弁論に於ける当事者の陳述に基き要領を摘示して之を為すことを要す。」に違反しているのは明らかである。

3 以上1、2の法律違反は民事訴訟法第三九四条「上告は判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背あることを理由とするときに限り之を為すことを得る」に該当するのは、明らかである。

4(1)<1> (事実)

控訴審において、上告人は

第一審訴状、第一回準備書面より第十二準備書面を陳述した。第一審第八準備書面でも原告の主張に対する立証を行った。

被上告人は、第一審訴状第一回準備書面より第十二回準備書面に対してなんら、争わなかった。

上告人は、控訴審になってからも第一準備書面より第九準備書面までを陳述した。

ところが、被上告人は、その答弁書において、

「被控訴人の主張

被控訴人の主張及び立証は当審における控訴人の訴える主張、立証を待って随時提出する。」と陳述しておきながら、なんにも争わなかった。

これら被控訴人の行動、言動は民事訴訟法第一四〇条「当事者が口頭弁論に於て相手方の主張したる事実を明に争わざるときは其の事実を自白したるものと看倣す」に該当する。これは民事訴訟法第二五七条「裁判所に於て当事者が自白したる事実及顕著なる事実は之を証することを要せず。」を採用すべきである。拠って、これらの法条に違反した判決をしている。

5(1) <1>(事実)

第一審において、昭和六三年九月二六日証人尋問に吉田病院・宮地医師が被告の処分が適法である旨の立証のため証人として出頭した。

その速記録20枚目裏十二行目から21枚目八行目までで

『原告「被告のほうが、審査請求における段階で、甲八号証の弁明書の二ページですけど本件処分に至る経緯としまして、公傷にかかわって治療を受けていた医療機関の主治医と事業所の担当者と労働基準監督署の担当者から事情聴取を行った結果、沖野が意図的に公傷期間の引き延ばしを行なったものとの確証をえました。と書いてありますが、公傷期間を意図的に、引き延ばしたと、おたくさんは被告に言うとるわけですか。」

「意図的に延ばしたということを言っているかどうか、ということですか。」

「だから、おたくさんが、職業安定所の誰かに、ですわ。そんなことを言ったんですか。」

宮地「そういうことは言ってないですね。」と、記録されている。』

これは、宮地医師が被上告人関係人に「沖野が公傷期間を意図的に引き延ばしを行った。」とは言ってないということを述べているのです。証言している。

(2)<1> (1)<1>の事実を控訴裁判所は何の理由もなくその証言を排斥している。

<2> 前記証言は、処分理由の一つである。

「昭和五七年一〇月四日及び同六〇年十一月五日に発生した公傷について、意図的な公傷期間の引延ばしを行った。と認められることは神戸港登録日雇港湾労働者登録取消運用基準一の(4)、常習的公傷者と認められる者に該当する。」と主張する被告が連れてきた証人宮地医師が述べたことである。ところが、この重大な証言をなんの理由もなく排斥している。

拠って、控訴裁判所は民事訴訟法第一九一条、「判決には左の事項を記載し判決を為したる裁判官之に署名捺印することを要す。」一項、の第三号「理由」の「理由記載不備」の判決をしている。

二 1(1)<1> (事実)

控訴裁判所は判決文・理由欄で

『理由一、当裁判所も控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がないのでこれを棄却すべきものと判断するところ、その理由は、次に付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決一三枚目表八行目の「八条一項、三号、」を「八条一項一号、三号、一九一号送達の別紙2の二(1)、一―(1)、(3)、」と訂正する。)。

当審における証拠調べの結果によっても、右認定判断を変更する理由を見出しがたい。』

(当審における控訴人の主張について)

<2>1「控訴人は、」より「原判決に控訴人主張のような法令違背はない。」まで

<3>2「控訴人は、」より「右濫用の事実を認めることができない。」まで

<4>3「控訴人は、」より「何ら不適法な点は存しない。」まで

<5>4「控訴人は、」より「違反するとはいえない。」まで

<6>5「控訴人は、」より「右主張は採用しがたい。」まで

<7>6「控訴人は、」より「判決を変更すべき理由を見出せない。」まで

『理由二、してみれば、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。」と記載した。

(2) (1)<1>の事実より

第一審判決文理由欄四の理由の結論を引用すると、「以上の次第で本件処分には控訴人の主張するような違法はなく控訴人の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。」となる。

ここで記載されている「本件処分」は、既に述べてきたとおり「偽物本件処分」である。

ここで記載されている「原告の主張するような違法」とは、「偽物本件処分取消請求偽物理由」である。

ここで記載されている「原告(排斥人)の請求」とは「偽物本件処分取消請求」である。ここで記載されている「これを棄却することとし」の「これ」とは「本物本件処分取消請求」である。であるので、控訴裁判所は本物本件処分をいじくり偽物本件処分を捏造して、控訴人の本物本件処分取消請求にもかかわらず、「偽物本件処分」には「偽物本件処分取消請求偽物理由」はなく「偽物本件処分取消請求」は理由がないから「本物本件処分取消請求(被告が原告に対し昭和六一年一〇月十七日付でした日雇港湾労働者登録取消処分と取消との判決を求める。)を棄却する。と全く矛盾した論法で請求を棄却控訴人の幾多の主張を排斥して仮の請求理由では本物本件処分取消請求を棄却できない。

(3) また、

「本件処分には原告の主張するような違法はなく」と、述べているが、当然、この「本件処分」は「偽物本件処分」である。

もし、仮に「本物本件処分」に根拠法がなければつまり「偽物本件処分」であれば、上告人は、とっくに、港湾労働法には登録取消基準が規定されているので、根拠法のないあやしげな処分理由をつっついている。

はっきり言えば、根拠法がなければ処分は成りたたない。成立しない。

「原告は昭和六十一年六月一日から同年九月二九日までの間、無届による不出頭を行い、かつ、その不出頭理由が正当なものとは認められない。」

「同五七年一〇月四日及び同六〇年十一月五日に発生した公傷について、意図的に公傷期間の引き延ばしを行った。」での処分理由ではどうしようもなくしまりのない処分理由になってしまう。

それは、控訴裁判所が本物本件処分より根拠法を排斥し、偽物本件処分とよく似た事実と称して不実を作り出し、これに新たに本物本件処分の根拠法を作り出し本物本件処分を棄却した。過程を振り返れば自明である。なぜ、控訴裁判所が偽物処分からこれとよく似た不実を作り出し、なぜ根拠法をくっつけたかを考えればわかることである。

控訴裁判所は、控訴裁判所自身が「偽物本件処分」が違法であるのを知っているのである。

また、「本物本件処分」が違法であるのを知っている。そこで新たな不実を捏造して新たな根拠法をつけ加えている。この心理過程がなければ、新たなる根拠法をつくり出す必要はない。

以上、(1)、(2)、(3)より控訴裁判所は民事訴訟法第三九五条「左の場合に於ては常に上告の理由あるものとす。」第一項、第六号「判決理由に齟齬があるとき」に該当する判決をしている。

2 控訴裁判所・判決文

理由一、(当審における控訴人の主張について)の

1 記載理由は何を述べているのかさっぱり分らぬ。矛盾している。

<1> 「原判決の右記載部分をもってすれば右処分を特定するに足りるものというべきである。」としながら、

<2> 「原判決は右主張責任の分配の理論に基づき五枚目表二行目から八枚目表八行目までにおいて、被控訴人の主張として本件処分の適法につき記載しており、その中に根拠法についてふれている。」と、根拠法を記載しているからいいのだ!と<1>、<2>では差異がある。

また、「被控訴人の主張として本件処分の適法につき記載しており、その中に根拠法にふれている。」としているが、この根拠法は「本物本件処分」に記載されている根拠とは違うものである。

また、1より控訴裁判所が根拠法を新たにつけくわえたことにより控訴裁判所は根拠法が必要なことを自白しているので、この理由も矛盾を含んでいる。

拠って、これも民事訴訟法第三九五条第一項第六号にあたる判決をしている。

また、「控訴人は右処分を特定するに足りる事実を主張すれば足りると解すべきである。」と記載しているがこの「特定するに足りる事実」というのは、根拠法に対する特定するに足りる事実でなければならない。

控訴判決文・理由一

2 について

「右争いのない事実はこの争点の判断には関係がないことが明らかである。」と無茶苦茶な論議である。

控訴人は「処分は、沖野敏男の登録を取り消す目的でなされた作為ある処分である。」と本物本件処分取消請求理由で述べているのである。拠って、これが原告、控訴人が主張で述べていることである。

被上告人は「処分が沖野敏男の登録を取り消す目的で仕事に昭和六十一年十月一日より原告に仕事にでるのを待ってくれと言った」ことを自白しているので、争点は、この「処分は、登録を取消す目的で処分をした」「本物本件処分」が違法か否か?、である。第一審判決が事実を摘示しているか?、いないか?、である。拠って、これも民事訴訟法第三九五条第一項第六号に該当する。

3 また控訴裁判所判決文・理由欄

理由一、1記載事項について

「別紙記載のとおり、その他種々の点にわたって主張するが、これらの点に関する点に関する主張を考慮して」と記載しているが、全く控訴人の主張をうけつけようとせず、また、現実に控訴審になってからの控訴人の第一、二、三、五、六、九準備書面を別紙から排斥しているのにもかかわらず、無茶を述べている。

これも、民事訴訟法第三九五条第一項、第六号に該当する判決をしている。

(4) 根拠法を除いた「偽物本件処分」のみでも十分違法処分である。

(理由)

1 控訴裁判所が新たに根拠法をつけ加えた事実より明白である。

2 「原告は昭和六十一年六月一日から同年九月二九日までの間、無届による不出頭を行い、かつその不出頭理由が正当なものとは認められない。」との単独でも違法である。

(その理由)

<1> この処分理由の一つ、被上告人が主張するところは一つは無届だから登録を取消す。もう一つは不出頭理由が正当なものではないから、登録を取り消すである。

<2> まず、「不出頭理由が正当なものとは認められない。」の文言より「届け出」があったことが、被上告人が述べているのである。

<3> 拠って、無届けではないと被上告人が、述べているのである。

<4> 港湾労働法施行規則第二十六条第二項証明する書類を登録公共職業安定所長に提出しなければならない。ただし、登録公共職業安定所長がその提出の必要がないと認めたときはこの限りでない。」と限定されている。

<5> 上告人は、昭和六十一年十月一日被上告人所属、紹介係長野中正信より、「病院へ行ってないのであればその理由、職安へ出向かなかった、出向きにくかったのであればその理由を書いて名前を書いて印を押して出してくれ。」といわれ、その日のうちに出している。それ以後、どうしても被上告人から「その出頭することができなかった理由を証明する書類を提出しろ、」とは言われてない。これは、「ただし、登録公共職業安定所長がその提出の必要がないと認めた」時にあたることになる。拠って、不出頭理由が正当であるとか、不当である、との云々はないのである。

つまり、被上告人の無知によって出した処分理由である。無知では失礼かもしれないが作為ある処分理由が正解でしょう。

3 「昭和五十七年一〇月四日及び同六〇年十一月五日に発生した公傷について、意図的に公傷期間の引延ばしを行った。」との単独でも違法である。

(その理由)

<1> まず、何のことか意味が分からない内容の不明確な処分理由であること、

<2> 次に、常識中の常識である労災保険の支払い等の決定権は労働基準監督長にあること

<3> 被上告人が訴訟になってから主張する、「昭和五十七年の事故に関して、昭和五十八年二月末症状固定」「同年六十年十一月五日発生の事故に関して昭和六十一年二月末に症状固定」との云々は、控訴裁判所、判決文・理由で「原告は右各傷害の休業期間、労災保険法に基づく休業補償給付を受けたことが認められる。」と記載している通り、所轄の神戸東労働基準監督署が上告人に支払っているのである。

法律でいえば、労働者災害補償保険法施行規則第一条第三項「保険給付の支給は都道府県労働基準局長の指揮監督を受けて、仕事場の所在地を管轄する労働基準監督署長が行う。」と規定されている。

<4> 被上告人は、行政人としてあるまじきことを訴訟に至って、述べ出したのである。

昔流に云えば「差配違」である。

以上より本件処分(本物本件処分)より根拠法を除いたつまり偽物本件処分でも単独で違法である。拠って、この様な被上告人の本件処分を通した控訴裁判所は棄却に持ってくる理由、無理矛盾があるのは明白である。これからも、控訴裁判所は本件処分取消請求棄却理由にそごあるのは明白である。控訴裁判所は民事訴訟法第三九五条第一項第六号に該当する判決をしているのは明白である。

以上

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